日生国 神聖

日生国には,「神聖」という地位が存在する。

神聖は,聖家の男系男子および男系女子のみが世襲する地位である。

聖家は,
日生国建国の祖 明彦を初代とする。

明彦は,神話では天地開闢の神々の子孫で、
祖先神の神通力と守護を得て建国したとされている。

神々の末裔とされる神聖家は,
代々,国の祭祀を引き受けた。

その後,古代日生国の全盛期を現出し,広大な海洋帝国を築いたのが,
やはり,聖家から出た総攬 丸姫(まりひめ)であった。

建国の総攬と全盛期の総攬を輩出した聖家は,
丸姫以降,一層,特別な存在となる。

加えて,古代末期に
浜名国と組んで宿敵であるトヨハラ政権を打倒,
千年の都となる久礼を築いたのが,

こちらも聖家出身の総攬 美慈(よしちか)であった。

ここに至って,元老院は,
日生国の歴史に不朽の業績を遺したとして三総攬を讃え,

あわせて三総攬を生み出した聖家に,
「神聖」の位と「聖家」(せいけ)の称号を謹んで献呈したのである。

「聖家」には「神聖の家」という意味がある。

正確には,聖家はこれをもって「聖家」を名乗り始めたのであった。

それ以前に聖家がどのように名乗っていたのかは,
既に忘却されて定かではない。

こうして日生国は,
神聖を頂点とする世界観と
総攬を頂点とする世界観とが重なりあう社会となる。

神聖の地位それ自体は,象徴的な地位であり,
日生国全体に対しては,
民主的な立憲君主に見られるような特徴を持っている。

いわゆる「君臨すれども統治せず」である。

しかし,
神聖家自体は,広大な所領を有しているのであり,
そこでは無論,神聖は「君臨し統治する」存在である。

神聖はつまり祭祀のみを担う存在ではなく,
世俗的権力・影響力をも有する存在である。

また,神聖が総攬を兼ねる場合,
日生国全体に対しても神聖は「君臨し統治する」存在になる。

ところで,爵位が元老院から「与えられる」ものであるのに対して,
「神聖」は元老院が「謹んで奉った」ものに他ならない。

「元老院」を上回る存在が日生国に誕生した瞬間であった。

聖家は,「君主を戴かない日生国」にあって,実質的には「君主」であり,
その家柄の古さ,確かさと実力とによって,
常盤世界において「皇帝」に比肩する権威となっていく。

また,15世紀末以降に来航する西洋諸国では,「神聖」の称号の起こりが,
古代イリオン帝国の「尊厳者」の称号の起こりと酷似していることから,「神聖」の語を
「アウグストゥスもしくはセバストス」と訳した。

「尊厳者」の意である。

しかし,「尊厳者」と訳しながら,西洋諸国では,
また「神聖」を,「教皇」のような存在と認識した。

そして,総攬を「諸王の王」として
「皇帝」として扱っている。

西方教会世界の視点では,総攬に就任した神聖は,
東イリオン帝国の「皇帝」に似た世俗的にも宗教的にも最高峰の権力を有する存在と認識されたようである。